追善茶事

 
斎藤先生ご夫妻

 
私どもの庵は、住居とともにある限られた空間ですが、縁あって結ばれた方々に、お茶の心を楽いつくあんしんでいただいています。
「一宮庵」として、本格的に茶事を催すようになって以来、懐石料理を学びたい、お茶の心に触れたい、人と人との縁を深めたいなど、動機がどうであれ、現代の暮らしの巾にお茶の心を活かしてゆくことを、私自身が感じ、お越しくださる皆さんにも伝えてゆけたらと思っています。

九歳で主人・弘祥の義母・宗玉に師事して半世紀。
いまでも、義母の言葉は私ども夫婦とともにあります。
「茶に縁をいただいた者は、毎日の暮らしの中に教えを活かし、実践して茶恩に報いること」「仏に供え、人に施し、我も飲む」と、義母は茶の道を事あるごとに語ってくれました。何よりも、みずからが茶事を催すことを楽しみ、実践してみせた義母は、どんなときも茶の心を忘れぬようにと、徹底した数寄者であったと思います。繰り返し基本を学び、時に破り、「温故知新」の心を会得して、「お茶は粋と野暮の真ん中をいく」と教えられました。
暮らしの中で、灯りをともし、器を愛で、茶の心を忘れずに歩いてきた両親の道を、いままた私ども夫婦が模索しているところです。私どもの毎日は、まず神仏に手を含わせ、築地の市場に出向いて、新鮮な材料を得ることから始まります。
 二人で全国を旅して歩き回り、親しくなった方々から、新鮮な美味しい食材を寄せていただくこともしばしぱで、これも、お茶の縁あってのことと思っています。できるだけ索材から吟味し、余すところなく自然の恵みを活かし、厨房では夫婦二人で包丁を握る毎日です。

八月は、私事ながら、尊敬する義母の追膳月でもあり、皆様にはお盆月でもありますので、この一ケ月間は、茶を尊び茶を愛でて暮らした両親の旅立ちの、追膳茶事を催しています。
このたびの茶事は、義母の思い出いっぱいの取り含わせとなりましたが、皆様の常々の心と重ねていただければ幸いです。濃茶・薄茶席では、お茶を点てて仏に供え、亡き方々をともに偲ぶ心としていただきたく思っています。
小さな窓から差し込む朝日の輝きを、東の空の大いなる恵み「壺中に天あり」と感じて、今年は何処の地で夏のお客さまをお迎えするのか、私自身、自由自在に心を遊ばせています。
茶事のお申し込みは、お一人でも構いません。一客一亭もお受けしますし、またお一人でお越しになった方同士の縁も大事にしていただけたらと思います。
お気軽にお越しくださいませ。
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寄付 image
春慶塗の釣瓶水指には、
たっぷりと氷の入った冷水が用意されます
寄付

曙の光に、青竹が爽やかな寄付。
水の尊さを心身に感じながら、
名水で知られる金沢の白神神社の伏流水をいただき、
客人が揃うのを待ちます。

 

寄付 image
汲出しには、こけももを一粒
寄付 image
掛物の替わりに水を司るといわれる、すいは観音の額をかけて

 


 

懐石 image

懐石 image

暑さを感じないよう、炭手前は香手前に。
すいは観音の御前で席中を清めます
懐石

点茶盤に用意された懐石膳で、
心尽くしの手料理をいただきます。
立礼の気軽さに、暑さもやわらぎ、
心くつろぐ朝茶事のはじまりです。

 
【 折 織 】
備前陶板の御膳に、向付は生湯葉。わさびと木の芽を添えて。紫蘇飯の一文宇に、汁はじゅん菜に粉山椒で香りよく

【 煮物椀 】
氷に見立てた菱形の胡麻豆腐に、いんげんと椎茸。さっぱりとしていながら、コクのある一椀。椀蓋の裏に忍び生姜

【 強 肴 】
モダンな洋風の演出で、鮎の風干しと・茄子浸しの梅寒天添えの二種を。重ね皿はロイヤル・コペンハーゲン社製

【 八 寸 】
鮑波切りと・胡瓜雷おろし。器は・亭主の母が、鎌倉で作陶したという遺作

【 お菓子 】
お菓子は涼やかな琥珀羹。母の代よりおつきあいの深い東京・世田谷の香風製

 

濃茶 image
濃茶 image
濃茶 image 濃茶 image
濃茶 image

 


 

中立 image 中立

懐石が終わるころになると、
夏の陽射しが徐々に高くなってきました。
中立で、露地の心地よい木陰に場を移し、
風を感じながら、お菓子をいただきます。

露地のテーブルは、臼に夏草を活込み、
ガラス板をのせた、
亭主のアイデア溢れる演出

 


 

濃茶 image

濃茶 image
濃茶席は主人の弘祥が亭主、
宗厚が半東を務め、仲睦ましくもてなし

濃茶

後座では、床の百済観音に花が供えられ
灯明にも火がつけられました。
仏にも供茶がなされてから、
客人に濃茶がふるわれます。

 

結界

水指
杓立
茶入
仕覆
茶杓
茶碗
建水
蓋置
青竹 白虎
鬼面
五彩龍紋四方 北村隆作
花入 バカラ社製
瀬戸 片身替わり
間遺
銘 偕老同穴 自作
手づくね 宗玉作
青磁壺
ナプキンリング エルメス社製

 


 

続き薄 image

続き薄

朝茶事は、日がたかくならぬうちに、
「刻が移りましては、ご迷惑ですので……」の
亭主の挨拶とともに続き薄が点てられます。

 

 
撮影・与古田松市  協力・「なごみ」編集部 
※「義母の追善茶事」は「なごみ」平成10年8月号に掲載された記事・写真を拝借しWEB用に仕立てました。関係者の方々、ありがとうございました。

 

 
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