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海という字のなかに母がある、とある詩人が謳っていたが、なんとフランス語の母 Mère のなかにも海 Mer があるではないか。 つまり「すべての生命は、母なる海、海なる母から誕生した」ということなのだろうか。
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地中海の旅は文字通り海とのつき合いがポイントとなるが、タラソテラピー Thalassothèpapie とは、ギリシャ語のタラサ(海)とフランス語のセラピー(治療)の造語で、1876年にフランスの医師ラ・ボナディールによって命名されたという。
海のすべてを活用するタラソテラピーは、医師の指導のもとにリューマチ疾患、骨折などの治癒の補助療法として効用があるが、予防医学的な側面にも注目され、心身のリラクゼーションや美容、禁煙、減量などを目的とした人々にも人気が高い。 |
紀元前420年には西洋医学の祖といわれるヒポクラテスが温海水浴を提唱し、かのプラトンも温海治療で病を治したとの文献も残っている。 風呂好きであったローマ人は、帝国の膨張と共に宮殿とあわせてアルルにも残されているローマ風呂を各地に造り、入浴文化が発展した。
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数年前、僕がはじめて体験したタラソテラピーは、なにもかもが珍しかった。シャワーを見ても、これがどういう目的で使われるのか、バスタブを見ても触っても、その用途はわからない。プールサイドに出れば、胸をあらわにしたまだ若い女性が読書しているいし、これもカルチャーチョックなのだろうかと悩んだりもした。
白衣の女性に案内され、ドクタールームに入った。いかにも診療室といった白壁に白い床。壁のビュアーには、数枚のレントゲンのネガティブ。聴診器を肩からさげたやさしそうな医師がニコニコしていた。
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「キミはテンションが少し高い。コーヒーとアルコールをひかえるように」 やはりお医者さんの言葉には説得力がある。以後二週間(だけ)、僕はコーヒーはカフェイン抜きに徹し、アルコールもすこしだけ我慢できた。このさいだから禁煙――本当の話、アルコール、コーヒー、タバコはそんなに努力せずに自重できたから不思議――も試みた。
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さて僕の今日のトリートメントは、アフュージョンシャワー、海藻パック。バスローブを脱ぎ、海パンのままベットに横になろうとしたら、ブルターニュ女性たる逞しい女性(オバサン)が、ソレも脱げという。えぇっ、でも……と思ったのも一瞬で、気づいたら僕は彼女のいうなりになっていた。 ベットの上には一〇個ほどのシャワーヘッド。うつ伏せになった瞬間、海水が雨滴のように降り注いだ。海水が首、背中、臀部、太ももそして足の裏を糸状になった海水が温水、冷水と交互に強弱をつけて刺激する。この療法は、血行を促進させ筋肉の緊張を和らげる効果があるという。昼寝感覚で横たわっていると、ほんとうに寝てしまうくらいで、放心してしまうよう。 次ぎのトリートメントは、気泡マッサージバス。バスタブの形は普通の浴槽であり、いわゆるジャグジーなのだが、マッサージ効果を緻密に考慮した繊細な気泡が噴射し、コンピュータ制御された水流の強弱、気泡の大小は、二〇分間、鍼療法のツボを小気味よく刺激。
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最後のトリートメントは午後二時からの海藻パック。僕はこれをコブ巻と呼んでいるが、その形態はまさにコブ巻状態。ペースト状になった海藻を全身に塗り、その上にパラフィンを被せさらに熱線の入ったキルティングが全身を覆うというけっこうおおげさなトリートメント。 海藻の滋養成分やカリウムを皮膚から吸収し、自然な発汗を促すのがこのトリートメントの効用で、細胞の活性化のため潤いを与え、皮膚の老化を防止する効果がある。
じつはこのトリートメントでやっかいな問題がもち上がった。 |
「タラソテラピーを受けても、食事が不健康だったら意味がありません。ここでもダイエットメニューはトリートメントの一貫です」 とディレクター。 |
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