Pere&fils
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エペルネからシャンパン街道を南へ二十分ほど車で走ると、ル・メスニル・オジェ という村に着く。この村のシャンパン醸造所、ロノワ・ペール&フィスの敷地内にある「ワインとブドウの木美術館」では、数千体ものブドウの木の彫刻に出会えるという。
  Pere&fils
ル・メスニル・オジェ村にある
ロノワ・ペール&フィス。

花飾り
四代目、ベルナー・ロノワ氏
自慢の花飾り。
  ブドウの木は最長で百年もの間、果実をつけて生き続ける永年作物である。大地のささやきを聞きながら、大地に秘められたパワーを享受し、極上のシャンパンを誕生させるブドウを実らせる。

「ブドウ畑には人間の血が流れ、このうえなく人間を思慮深くさせる」
と言われるように、人は広大なブドウ畑の中に立つと、四季折々の風景にふれて、さまざまな感慨に浸る傾向があるらしい。六月から九月、たわわに実をつけたブドウの木が連なる様は人を圧倒する活力に満ちている。また、すべての収穫が終わり、全精力をもぎ取られて枯れ木の群と化す寂寞とした冬のブドウ畑は、厳しい寒さに耐えつつエネルギーを蓄える力強さを感じさせる。

しかし、禍福はあざなえる縄の如し。天候によって、高品質のブドウが大量に実る 年もあれば、そうでない年もある。ブドウの木が大地と交わすさまざまな会話が聞こえてくるほどに、人はブドウ畑に“人生の波”を重ね合わせて考えこんでしまうのかもしれない。

だからこそ、生命を全うしたブドウの木にも、魂が宿っていると感じられる。「ワインとブドウの木美術館」で出会ったブドウの木の彫刻たちは、彫刻家の手によって人の姿に形を変え、生き生きとした表情と躍動感で迫ってくる。ブドウの木はまさに、“魂の宿る木”。大地のささやきを伝えるかのように、神秘的な力で私たちを魅了する。

ワインとブドウの木美術館
ロノワ・ペール&フィスの敷地内にある「ワインとブドウの木美術館」
ところで、この美術館はロノワ・ペール&フィスの所有者であり、自らシャンパン づくりも行う四代目、ベルナー・ロノワ氏が一九七〇年代前半に趣味として始めたもの。ワインの木の彫刻のほか、十七世紀から十九世紀にかけてワイン醸造に使われた機械や道具類のコレクションも展示している。地方ごとに固有の形式がある巨大な圧搾機は必見だ。どれも使い込まれて色が褪せ、ところどころに黒い染みがある古びた木造り。年代物のワインに対面したときのように、ノスタルジックな感慨を覚えることだろう。

美術館を見学した後、三種類のシャンパンを試飲させてもらった(これは見学料三 十五フランに含まれているサービス)。そのうちの一つ、キャロリーヌ・ド・シェチロン ブリュットは柑橘系の果物の溌剌とした味わい。暑い夏の午後、テラスで飲むアペリティフとして最高のシャンパンだった。キャロリーヌはロノワ氏の娘さんの名前、シェチロンは畑の区画の名称だという。ロノワ氏はきっと、娘にあふれんばかりの愛情を注ぐように、このシャンパンをつくってくれたに違いない。
  シャンパン
柑橘系の果物の溌剌とした味わいが魅力




Castellane   Pere&fils
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