とっておきのホテル
第4話
ラ・ブリケットリー

HOSTELLERIE LA BRIQUETERIE


一つ星のホテルレストラン

ホテル外観
ブドウ畑に囲まれた「ラ・ブリケットリー」の外観。
(「FUJI FILM TX-1」で撮影しました。)

 ランスからエペルネ南部に広がるブドウ畑は、地形と栽培される主なブドウの品種 によって、三つに区分される。その一つ、コート・デ・ブラン(白い丘)はシャルドネだけを栽培する南部の一帯。ホテルレストラン、ラ・ブリケットリーはその中心部、一面ブドウ畑の景観のなかで、静かに私たちを迎え入れてくれる。

 格調高い四つ星ホテルに併設されたレストランは、ミシュランガイドで一つ星の評 価を獲得。シェフを務めるベルナー・クリストフ氏は、リヨンの名門三つ星レストランであるポーズ・ボキューズで三年間、ソース担当の長として腕を磨き、コート・ダジュールの名店ルイ・キャーンズで腕をふるった輝かしい経歴の持ち主である。クリストフ氏は地元の農家から鳩やエスカルゴなどの素材を購入し、郷土色豊かな素晴らしい料理を創り出している。そんな氏が勧めるコース料理に合うシャンパンを、ソムリエのファビアン・ドゥラフォン氏(レストラン責任者、副支配人を兼務)が選んでくれた。

シェフとソムリエ
右からシェフのベルナー・クリストフ氏、麗しき総支配人、
ソムリエのファビアン・ドゥラフォン氏。

 まず前菜は、バラの模様に盛りつけられたオマール海老を、白ワインとオリーブオ イルで煮込んだアーティチョークで飾った繊細な一品だ。これには「ジュオンメールブリュット一九九〇年」。シャルドネ一〇〇パーセントの爽やかな酸味が特徴的で、九年間の熟成が醸すヘーゼルナッツや、パンを焦がしたような香ばしさがある。

前菜
オマール海老を、白ワインとオリーブオイルで煮込んだ前菜。

 そしてメインは、ジェフ自慢のカモのフィレ肉をミディアムレアに燻した燻製。こ れにハチミツとワインビネガーを加えてとろ火で煮込んだ野菜と、小さな果物のミニ串刺しが添えられている。この目にも美しい料理に見合う高い格調と、味の奥深さが、シャンパンにも求められるところ。ソムリエは迷わず、ヴィンテージのなかでも一級品に数えられる「ローラン・ペリエ ブリュット一九九〇年」を選んだ。このシャンパンはミネラル感があり、それでいて力強さを兼ね備えている。とくに余韻の優雅さといったら……! 飲まずして想像しえない味わいだろう。

カモのフィレ
カモのフィレ肉をミディアムレアに燻した燻製。
デザート
サヴァランケーキに、
イチゴのアイスクリームを載せたデザート。

 最後は、フランボワーズのリキュールをしみこませたサヴァランケーキに、イチゴ のクリーミーなアイスクリームを載せたキュートなデザート。シャンパン選びには一工夫要する一品である。というのも、このサヴァランのなかには、「カカオの金塊」 と命名されたチョコレートが入っているからだ。チョコレート特有のほろ苦さと甘みは、シャンパンの持つ繊細な味を損なってしまいかねない危険がある。そこでシェフが選んだのは、年代ものの逸品「ポール・ロジェ エクストラキュヴェ ブリュット一九七三年」である。二十六年の熟成期間を経て酸味が消えたまろやかさ、驚くまでに高められた複雑で凝縮感のある香りに絶句する思いだ。干しイチジク、トリュフ、マロン、そしてチョコレートの香りも含まれているので、チョコレート入りサヴァランとの相性も抜群である。デザートには酸味の減った古いシャンパンを、これが鉄則のようである。

 フレンチのコース料理をシャンパンとともに味わう、贅沢で優雅なディナータイム 。シャンパ街道を行く旅でしかか享受できないこの幸せを噛みしめながら、シャンパンに心酔したひとときだった。

ブドウ畑
神々の恵みに宿泊客も感謝するだろう。
ホテルから出ると、広大なブドウ畑が広がっていた。



HOSTELLERIE LA BRIQUETERIE
4,route de sezanne 51530 Vinay-Epernay
TEL 33 03 26 59 99 99
FAX 33 03 26 59 92 10

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