とっておきのホテル
第10話
シャトー・ディスクリモン



貴婦人の館


これぞホテルの正しい利用法。ロワールの午後はこれからである。

「フランスの庭園」と呼ばれるフランス最長の川、ロワール流域。ルネサンス期には、ヴァロワ王朝の歴代の王がここに宮廷を開き、華やかな文化が栄えた。暗い権謀術数が渦巻き、貴婦人たちのロマンの舞台となった多くの城館が今もこの地に遺されている。王侯貴族の栄枯の跡をたどる旅には、贅を尽くした古城の一夜こそふさわしいではないか。
 パリから鉄道で約40分、ノートルダム聖堂の尖塔がそびえる古都シャルトルにつく。シャトー・ディスクリモンはここから20キロの田園地帯にある。周囲に濠をめぐらせた城館の歴史は1543年にまでさかのぼり、中世の雰囲気をとどめる。ツールの大司だったエチェンヌ・ド・ボンシュが四つの円塔を配した堅固な城からはじまり、ホテルになったわけだが、城内には当時の雰囲気を伝える地下牢も残っている。その後、シュベルニー城を建てたアンリ・ド・シュベルニー、ルイ十三世時代の司法省と大蔵卿など代々の城主の手を経て、帝政時代にはラ・ロシュフコー・ドゥドービル家の所有となった。現在の内装は18世紀の建築家の手でルネサンス様式に統一されている。
 入り口の上方にあるバルコニーやレストランの天井など、いたるところに“フランス・ルネサンスの父”と呼ばれたフランス国王、フランソワ一世の代父だったフランソワ・ド・ラ・ロシュフコーの銘句「セ・モン・プレジール(それは私の喜び)」が刻まれている。
 豪華な天蓋付きの寝台の置かれた落ち着いた部屋、カーテン、壁紙、ベッドカバーまで初々しい花柄で揃えられた可憐な部屋…。53室もある各部屋はそれぞれに意匠が加えられ、天井も高く、実にゆったりとくつろげる造りだ。


ランチだけのためにパリからヘリコプターでやってきた。

パリからきたゲストの週末。

 「円錐形に刈りこまれた木々の立ち並ぶイギリス式庭園から、延々とつづく森まで見渡せる窓辺からの風景は、時の流れを忘れさせてくれる。城をめぐる濠沿いの小道から森を目指して散歩にでかければ、小鳥のさえずりを背景に鹿が木々の間を走り抜けていく姿に出あうだろう。“鹿の小径”と名付けられた散歩道があるのもうなずける。ホテルの前に広がる湖では、釣りを楽しむ宿泊客の目の前を白鳥がゆうゆうと泳いでいる。ちょっと貴族気取りでテニスコートで汗を流すのもまた格別の気分だ。


ゆで卵は絶妙な茹で加減だった。


 足を伸ばせばノートルダム大聖堂の尖塔がそびえる古都シャルトルまで車で15分。大統領の避暑地として、また国際会議場としても知られるランブイエ城、赤レンガと石造りの華麗なマントノン城も近い。パリ近郊ツアーの足場として最高のロケーションである。
 総革張りの壁が自慢のレストランでのディナーもホテルの自慢。アペリティフにはシャンペンと黒すぐりのリキュールで作ったロワイヤル・キールがお似合いだ。男性にも女性にも好まれる当城の特製、「カクテル・エスクリモン」は是非おすすめである。


ホテルの前庭は白鳥の湖


CHATEAU D'ESCLIMONT
St-Symphorien-le-Chateau 28700 France
TEL:33-02-37-31-15-15
FAX:33-02-37-31-57-91

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