ホテルラヴァーにとって、まさにミレニアム、新世紀にふさわしい言葉だ。 「ここを我が家と思ってください」とはホテル王セザール・リッツ(1850〜1918)の名言だ。 もともとホテルの雑用係りであった彼の関心は「どうすれば客が喜ぶか」の一点。その結論が「我が家」であった。ホテルの門を一旦くぐれば、客はその時から主人になれるのである。つまり日常と非日常が交差する時間と領域をお金で買うのだから、ホテルではだれだってご主人さまになれるのだ。ホテル側もさまざまな演出で完璧に劇場化しているのだから、ホテルマンも努力して「召し使い」を演じてくれるだろう。 しかし世界の高級ホテルである「リッツ」を「我が家」と思える人はそうはいないのが現実。では「我が家」を「隠れ家」に見立ててはいかがだろうか。宮廷画家ベラスケスが何度も描いたマドリードの空の下に、非日常を凝縮した「隠れ家」を持つことは今生の喜びであるだろう。 よそ者を寄せつけない威厳を保つリッツ・マドリードは、ルーブル美術館や大英博物館と肩を並べる世界最大のプラド美術館の正面にある。ゴヤ、ベラスケス、エル・グレコなど3千点以上もの傑作を収蔵した美術館はホテルの延長にあるようなものだ。その宮殿を思わせるホテルの歴史は統治者たる国王自身によって作られたホテルである。 |
プラド美術館の鑑賞を終えレストランに直行した。 |
スペイン名物のハモンに頬がおちる |
現スペイン王、フアン・カルロス一世の祖父・アルフオンソ十三世は国際的感覚を身につけた人物で、ビクトリア女王の孫と結婚することになった。だが招待客のための一流ホテルがないことに気づき、現ホテルをリッツ社に建てさせたという。 1908年に設計され、二年後に開業したこのホテルは、当時のマドリード新聞のトップニュースになったほどである。ホテル内部はさすがにセザール・リッツの感性で充満している。サロンの床は精巧な寄せ木細工で描かれたリッツの紋章が誇らし気であり、白と黒の大理石につつまれ金色に輝くバスルームの金具などは、“ここはどこ?”と叫びたくなり、誰でも王子様の気分になれる。パリやロンドンのリッツとは一味違う重厚さがある。思わず瞬きするほど豪華な顔ぶれの並ぶゲストリストは、このホテルの文化であり財産でもある。 マドリードの人々にも人気があるのは1995年1月にオープンした六階にあるフィットネス・センター。プール、サウナ、マッサージで旅の疲れはどこかへ飛んでしまうだろう。 ちなみにリッツは五ッ星の一つ上の最上級のランク「グラン・ルッホ(GL)」が付いている。身体障害者用部屋や点字のメニューも用意されていることも付け加えたい。 リッツを「隠れ家」として利用する貴方は、どのようにこの「宮殿」を使いこなすだろうか。 |
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HOTEL RITZ Plaza de la Lealtad, 5. 28014-Madrid Spain TEL:34-91-701-68-02 FAX:34-91-701-67-89 |