アルノー河の南岸、フィレンツェの東南の小高い丘にあるミケランジェロ広場に登った。ここからは街が一望でき、ガイドブックを手にすると瞬時にして観光ができる。 イタリア・ルネッサンスの発祥の地でもあるフィレンツェは、現在でも15〜16世紀の建物や美術品がそこかしこにあり、まさにここは「ルネサンス都市」である。赤茶けた煉瓦屋根が、豊かな階調を創っていた。 その中で特に目につくのが、力いっぱいに、威厳をもって天に聳える大円蓋。これは大聖堂サンタ・マリア・デル・フィオーレである。 鐘楼のふもとには、11世紀に建てられた白い三角屋根をもった八角形のサンジョヴァンニ洗礼堂が見える。ジョットの鐘楼の左には、ほぼ同じ高さの要塞のような煉瓦の塔があり、ここは現在市庁舎として使われているヴェッキオ宮殿である。1314年に完成したかつてのフィレンツェ中央政庁があったところだ。そこからさらに左へ目をやると、二層づくりの古い橋ポント・ヴェッキオがアルノー河にくっきりと影を落としている。 |
気の遠くなるような歳月を経ても色褪せることがないフィレンツェ。人間の復権と自由、芸術を高らかに謳いあげ、近世の夜明けを宣言したフィレンツェ。その粋は、街で出会ったモザイク、額縁、金箔などを昔ながらの手法で形どる職人たちによって、ひとつひとつ証明されていったのである。 たおやかな光りに包まれつつも、過去の世紀と現在の葛藤に生きるフィレンツェに、一瞬でも身をおいてみては如何だろうか。その町を一望できるホテルは、イタリア随一のロケーションに恵まれているのである。 ホテル・ヴィラサンミケーレはミケランジェロ広場のちょうど反対側の丘の中腹にある。15世紀にフランチェスコ派の修道院として生まれ、修道僧が瞑想に耽った由緒正しき建造物である。ホテルとして生まれ変わったのは1950年代。現在は国の重要文化財に指定されて改装、改築は御法度。だからこそいまも神秘的で静謐な中世の風貌をとどめているのである。ファサードはミケランジェロのデザインになるというから、その歴史と伝統は推して知るべしだ。 |
客室は、25のダブルと1つのシングル、3つのスイートと12のジュニアスイートと部屋数は少ない。もちろんルームサービスは24時間体制である。修道院の食堂をそのままいかしたバーには、なんと石棺がバーカウンターとして使われていたから驚く。トスカーナ料理を心ゆくまで堪能できる回廊レストランのもうひとつの魅力はフィレンツェが一望できること。チラチラと流れる町の灯りを眺めながらのディナーは是非お奨めしたい。 ホテルからドーモまで無料のシャトルバスがでているが、今回の旅では「ホテルを旅」するのが目的だったので、僕はヴィラサンミケーレから一歩も出ることはなく、裏庭に面したプールサイドの面々を楽しんでいた―。 |
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HOTEL VILLA SAN MICHELE Via Doccia 4,Fiesole,50014 Florence,Italy TEL:39-055-567-8200 FAX:39-055-567-8250 |