とっておきのホテル
第12話
ホテル・スプレンディット



魚介を堪能する漁師町のリゾート

老練なコンシェルジュに学ぶ。

ホテルマンの心遣いは細部へも。


「もう50年になるかね。髭が白くなってもまだ現役じゃよ」  眼光炯々としつつも、爽やかな微笑をこぼすドミニック親方。赤と黄色に塗られた自慢の漁船で網を繕うその風貌は、まさに海の男。数々の武勇伝を秘めたような深く刻まれた皺は、漁師の誇りとして「男」を主張していた。
 喧噪のジェノバから電車で3〜40分ほどのポルトフィーノに宿を移した。地中海に面したこの美しい海辺の町はリゾート地として名高いが、魚好きのイタリア人にとってはその胃袋を満たすために欠かざるべき漁師の町でもある。漁を終えた漁師たちは、午前4時には海辺で露店の市場を開くと聞いていたが、残念ながら寝坊のためそのにぎわいは撮影できなかった…しかし海の仙人のようなドミニック親方の長く逞しい白髭を撮影できたのは、旅の土産としても極上ものであった。
「寝坊じゃいかんな。それにしても今は魚探知機、レーダー、無線と便利なものがあるが、昔はガスランプと勘だけが頼りだったな。大物のカジキにでくわすと、あれ(長さ3メートルはあり9本の鋭い刃がついているモリ)で勝負するのさ。カジキの知恵よりワシの方が上でね。いまだに負けしらずよ」とキャプテン帽の鍔を撫でる親方が片目をつぶった。



イタリアン・リビエラを望みながら朝食をテラスでいただく。
至福と夢見の時間が風とともに流れた。


 欧米では悪魔の魚と嫌われるタコもイカやエビと並んで人気があるイタリアは、やはり僕は大好きでたまらない。そんな漁師たちと緊密な連携をとっているリゾートホテルは、やはり魅力だ。
 海岸線と平行する道沿いにホテル・スプレンディットの門を見つけた。そこから車で十分ほどクネクネした山道を登るとやっとホテルの玄関にたどり着いた。濃い緑をたたえる木々の間から青いイタリアンリビエラが見える。プロローグとしての演出、ロケーションは文句なしだ。黒い大理石を踏みしめ、館内に入った。僕の顔をみてボーイさんがタクシーに荷物をとりにいったが、客が車から降りると同時に、迎えてほしいところ。でもボーイさんの人なつっこい笑顔に免じて許すことにした。案内された部屋の窓越しに海がひろがっていた。広いテラスも張り出しており、明日の朝食にはもってこいの雰囲気だ。部屋はていねいにハウスキーピングされており、快適そのもの。




 37のダブルと7つのシングル、8スイートと17のジュニアスイートで、このホテルは構成されているが、予約の時には是非ともリビエラ側を予約すべし。
 レストラン(La Terrazza Restaurant)からもリビエラを望むことができるのも嬉しい。北イタリアのリグリア地方では、タジャスカと呼ばれるリビエラ特有のオリーブが栽培されているが、オードブルやカナッペ、ピッツァ、エンダイブ、ラディッシュ、チコリなどの野菜や魚介類にも良く合うと聞いていたので、今回はたっぷりといただきたい。
 明日の朝食が楽しみである。



ホテルの離れは成熟した女性の趣。


HOTEL SPLENDIDO
16 Viale Baratta 16034 Plrtofino(GE)Italy
TEL:39-0185-267-801
FAX:39-0815-267-806


ボーダー

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