「フロッグサービス」の制作は、一年がかりの大仕事であった。エカテリーナ二世はマイセン窯の「スワン・サービス」、セーブル窯の「トルコブルー・ウエア」、ロイヤル・コペンハーゲンの「フローラ・ダニカ」など世界の名窯に当代きってのディナー・ウエアを製作させていた愛陶家でもあった。
ところで気になるのが「フロッグサービス」の値段。僕が私淑する陶磁器教授、前田正明氏の試算によると価格は当時の貨幣で約二七〇〇ポンドで、原価は二六一二ポンド。つまりウエッジウッドの儲けは一年費やしてたったの八八ポンドという。
さらに教授の解説借りると、一七七四年の完成時にロンドンのポートランド・ハウスに製品を展示し話題性を高める、つまり宣伝広告費を考慮すると八八ポンドはけっして安くはない、ということである。
シャルロット王妃をはじめ、貴族たちがポートランド・ハウスに押し寄せ、ウエッジウッドはさらに株が上がったのである。
まさに女帝の器は、ウェッジウッドの器量そのものであった。面目躍如である。
ウム、してやったりである。
今宵の宿はネフスキー大通りに面し、一八二四年に建てられた美しいバロックスタイルのファサードが印象的な「グランドホテル・ヨーロッパ」。
エカテリーナ二世の収集欲と権勢欲を肴に、一人晩餐を愉んだ。 |