赤ちゃん犬ジロウです。ボクは1985年4月岩手県の生まれ。 
兄弟4匹でひとつのダンボール箱に身をよせ合ってトラックで上京して来たんだ。ボクらが東京、日本橋のワシントン犬店に着いたとき、ちょうど今の飼い主のおねえさんとそのお母さんが、タカシマヤの買い物のついでに大好きな犬を眺めに来た。ダンボールのふたをひろげて覗いていかれたけど、ボクらは皆、車酔いでフラフラさ。疲れて朦朧として寝ぼけてた。兄弟4匹ともまるまるとして全員鼻黒。この鼻黒というのがおねえさんとお母さんにいたく気に入られ、急に犬を飼う話になったようだ。ご主人様の家では先代の柴犬ムクが数年前から行方不明で寂しかったらしい。

  しばらくして意を決して買いに行ったら、ケージに一匹も柴犬がいない。もしかして鼻黒の柴はもう全部売れちゃいましたか?、いやまだ1匹オスが残ってますよ、今別室でお昼寝中です、なんて会話があって、残りものだったボクはまたまた寝ぼけてご主人様とご対面。
そうしておうちに届けてもらったばかりのころがこの写真。 代々犬は外で飼うのが決まりの家だがちっちゃいので特別何日か玄関で寝かせてもらえることになった。みかん箱に新聞をひいて寝床にしてくれたよ。 
  はじめてのオチッコもこの玄関でチャーッとやったよ。台の上に上がって人のいるほうに行きたかったけど、小さいから上の段に昇れなかったんだ。
 
この家ではさくら(コリー)、ノンコ(コッカー)、タロウ(柴)、ゴロウ(アイヌ犬)、ムク(柴)と、おねえさんがものごころついたころから代々の番犬たちがお仕えして来たらしいが、抱っこされてもいつまでもむずがらず、膝から降ろされてもまたよじ登ってくる日本犬は初めてだ、とその甘たれぶりに驚かれたものだ。  ボクも番犬としてお仕えすべく、まず、ワン!を教えられた頃、一回目の毛の抜け変わりで、なんと自慢のハナクロの黒毛がなくなってしまったのだ。 ふつうの茶色の鼻になってしまい、ご主人様のがっかりは計り知れなかった。 ええー、サギだ、と言っても遅いよー。
  以後17年にわたって子犬のころはハナクロでかわいかったのに、と云い続けられることになったのさ。  

 

 ボクはこの家の庭の土の上を駆け回り、時々海の家や都会の外堀の土手に面したアパートなどあちこち連れてってもらったんだ。2才半ころには近くに捨てられていたメスの雑種の子犬クロちゃんが迷い込んできたんでごはんをおすそ分けして遊んであげたよ。
 
  はじめは子分にしたつもりだったけど惚れた弱みでそのうち逆にシリにひかれちゃったんだ。 それ以後、自慢の三重に巻いたりりしい尻尾を夜遊びに行ってなくして帰って来たりいろいろあったよ。番町から遁走して牛込警察に保護されて迎えに来てもらったこともあった。 
 
15歳を過ぎてからはやっと家の中に入れてもらえて、土手脇のアパートでおねえさんたちといっしょに暮らせたんだ。同じアパートの先輩老犬ポチくんとも散歩でいっしょになったりして楽しかったよ。駐車場や土手でおしっこ重ね合うのもタショウの縁てやつかな。
 両方ともいいご主人持ちで幸せだったよ。