今月のポチは「老いる」


 同じアパートにオイラのような老犬がいるんだ。
 彼はジローといって来年で17歳。ちょうどオイラより一年年下かな。ジローはほとんど歩くことができず、オシッコ、ウンコの時はご主人さまにダッコされて外に来るんだ。医学の発達は歓迎するが、その結果長生きするのも大変だ。人間サマの老後を観察していると、
長生きって何かを考えてしまうね。不老不死は人類の憧れらしいが、老いと死があるから、一生懸命生きるじゃないかな。昨夜観た実話をもとにした映画、デビッド・リンチ監督の「ストレイト・ストーリー」で気になるセリフがあったとオヤジさまが言っていたよ。
 「老いて辛いのは、若いころの記憶がまったく消えないことだ」と主人公のアルヴィン翁。
 オヤジさまが暫く無言だった……


 この日は天気もよく、ジローは日向ぼっこを愉しんでいた。そう言えば、あの大震災にも負けなかった「芦屋のポチ」は18歳でジローと同じ柴犬だった。オイラも彼もシッポを振る体力はすでにない。ましては愛嬌を振る舞う気力もないよ。じゃ、何故ジローやオイラは生かされているのだろうか。
「初志を貫き通すんだ」とアルヴィン翁が背筋を伸ばしていった。そうだ、ジローやオイラアルヴィン翁と同じなんだ。生き甲斐があるんなら、死に甲斐だってあるはずだね。
よし、これからも一生懸命、生きよう!!!
ジローの柔らかい視線に幸福を!!!

 

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オヤジさまからのプレゼントだよ。

 


表紙

夏休みのポチ
 
闘病のポチ

絶頂期のポチ

冬休みのポチ
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