今月のポチは「迷子のラヴ」

 


  

 陽気がポカポカの連休がはじまったころ、オヤジさまが知らないワン公を連れてきた。
 四谷の知人宅周辺を首輪もつけずウロついていたようです。ブースターケーブルで即席の首輪とリードをあしらってもらい、すぐにオヤジさまの車に乗ったようだ。車の窓を開けると、気持ちよさそうに身を乗り出し、ドライブを楽しんでいたとオヤジさまが自慢気にいっていた。犬種はドイツの名犬、ミニチュア・シュナウザーらしい。まあ、ご覧のようにしっかりと躾が往き届いているようで、デジカメのレンズをジッと一瞥するあたりは堂々とした物腰でもあったわけだ。
 でも、顔デカくない? 

 最初、彼はボクとの小競り合いを心配されて、オヤジさまの部屋に隔離されていたが、すぐに慣れちまった。そのかわり、しばし、ボクの自由は奪われてしまったわけ。でも、ものの数分でお互い友達になったね。もう、百年の恋のつき合いのごとくだ。彼はオスで5歳くらいだろうか。仮の名前でオヤジさまたちは、「ラヴ」と呼んでいた。
 はじめての夜、彼はオカアサンのベットにもぐりこんだ。図々しいワン公だが、まあ、客でもあるし、許してあげたよ。

 

 麹町署に迷子犬の届け出をしたが、とくにその旨の連絡はないようで、もし棄てられたのならどうしよう。でもどうやらオヤジさまたちは、「ラヴ」を飼うことに決めているらしい。ボクも年だし、そう、お世継ぎ問題もあるしね。ウチに来て3日目、四谷の知人から電話があって、迷子犬を告知した張り紙を見たとのこと。ミニチュア・シュナウザーとはっきりと書いてあったらしい。オヤジさまはすぐ、「ラヴ」のご主人に電話したわけだ。10分後、自転車にのってご主人が我が家の前にに着いた。
 「ラヴ
は何もなかったような顔をして、自転車の籠にチョコンと乗っていっちゃった──。でも不思議だったのは「ラヴのご主人、この3日間のことを何も聞かなかったよ。ふつう、「どこで見つけました?」とか、ボクの存在も知っているのだから「仲良くしてました?」とか聞くよね。なんか、変だよなァ……。まあ、いいか。
 「ラヴ
! 
 楽しかったよ。また迷子になるんだよ。

 

 

 

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オヤジさまからのプレゼントだよ。

 


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