今月の特集



ラビニーという小さな村を訪ねた。

		ジュラ地方の産業の中心地、ロンス・ル・ソニエから五キロほど北上すると、ラビニーという小さな村に着く。ここにも、たった六〇〇リットル、瓶数に換算しても千本に満たない量ではあるが、最高のシャトー・シャロンを醸造する男がいる。フィリップ・ビュタン氏だ。彼が造った一九九二年のシャトー・シャロンは、今年度のパリ全国農業品コンクールで金賞を獲得した。また、毎年七月初旬に開催されるアルボワのワインコンクールでも、コート・ド・ジュラの一九九二年ヴァン・ジョンヌ部門で、氏のワインが同じく金賞に選ばれた。
		今年度のパリ全国農業品コンクールで金賞を受賞。

「個人的には、母が作るウサギのテリーヌとシャトー・シャロン、これが最高の組み合わだと思います。食前酒として、クルミやコンテ（硬質チーズ）をつまみに楽しむのもいい。ただし、私の造ったシャトー・シャロンについて言えば、それだけで飲むことをお勧めしたい。クルミやコンテと一緒に味わうと、どんなヴァン・ジョンヌも至福のおいしさになってしまいますから」

ビュタン氏は少し冗談めかして、微笑みながらそう言った。彼のワインは残念ながら、日本で味わうことはできない。輸出の可能性について、氏は「このまま一人でやっていける規模で十分です。そのうち巡り合わせがあれば、日本への輸出もあるかもしれませんが」と謙虚に語る。彼が育てるはじけんばかりに実ったブドウたちを見に、再びこの地を訪れたい衝動に駆られた。

コート・ド・ジュラの一九九二年　
ヴァン・ジョンヌ部門で金賞を獲得。

クルミやコンテ(硬質チーズ)と相性がいい。

最高のシャトー・シャロンを醸造する男、フィリップ・ビュタン氏。　