ジュラワインは赤ワイン、白ワインの分野でも、独自の世界を持っている。また、 ジュラ産のマールと絞り汁を加えて造った、マクヴァンという独特の甘味ワインもある。村の数だけあるジュラワインの味わい。この地を回ると、ジュラワインの奥深さと多彩さに魅了され、多くの新しい発見をすることだろう。 |
のんびりとした時が流れる小さな村。 |
ジュラ山中にバッキュス(古代ギリシャの酒の神、バッカスのこと)が住んでいる 。そんな噂を聞きつけて、アルボワ近郊の小さな村を訪れた。豊かな髭をたくわえた赤ら顔のバッキュスは、大小の木樽が雑然と並ぶ薄暗いカーブのなかで、朝一番にワインを買いに来た常連客のために忙しく動き回っていた。 |
バッキュスの正体は、ジュラのここでしか買えないワインを醸造するルシアン・ア ビエ氏である。バッキュスの名の下、彼は「いっぱいに満たされたワインボトルの前で微笑んだら“十日間の牢獄刑”」、「二度とワインを飲まないと宣誓したら“死刑”」など、二十四項目から成る「バッキュスの刑法」を考案した。ユーモラスな条文に、思わず笑いがこみあげてくる。 |
ジュラ山中にバッキュス (バッカス)が住んでいた。 |
マクヴァンという独特の甘味ワインもある。 |
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さて、バッキュ スのワインのなかでも出色なのは、コート・ド・ジュラのトルソーだけで造った赤ワ インだ。一九八三年ものに鼻を近づけると、ピノノワールにも似た動物の革や湿った土の香りがする。また口当たりは、エレガントなコート・ド・ボーヌのワインを思わせるまろやかさだ。さらに驚かされたのは、十六年の熟成を経たとは思えない、溌剌とした新鮮さ!「バッキュスが乗り移っているのでは?」と思う、極上の味わいだった。 |