フランス編

 透き通った貴婦人の白い肌、典雅な金彩、繊細優美な薔薇の意匠。ヴェルサイユの食卓を彩る器たちに魅せられて、僕の旅は始まった。ロココの賛を究めたセーブル窯。純白の陶土に恵まれた磁都リモージュ。土のぬくもりをも感じさせる南仏プロヴァンスの素朴な陶器。この国を旅するとは誰にも気兼ねしない悦びを学ぶことでもあった。ボーヌ・シャンス(乾杯)!

 

イギリス編

 世界一有名なウサギ、ピーターラビットをお供につれて、陶工の街、ストーク・オン・トレントを皮切りに湖水地方、スコットランドを経て、隣国アイルランドまで旅をした。くすんだ煉瓦の壁、角張った煙突の民家、きらりと光る麦の穂先、偉大なる田園の国、水彩画の世界へいざ行かん。女王陛下に愛された器で午後のお茶を楽しみ「生命の水」でスランシバー(乾杯)!

 

ドイツ・オーストリア編

 マイセンの歴史はヨーロッパ磁器の歴史そのもの。東洋から輸入される皿と、屈強な兵士が交換される時代、東洋の白に憧れたザクセンの王と、彼によって監禁された錬金術師によって、マイセンの窯は開かれた。第二次世界大戦後第かれた東西分断の壁も職人たちの交流までは遮ることはできなかった。ソーセージとヘレスビアでマイスタージンガーにフロージット(乾杯)!

 

南欧編

 乾いた大地、照りつける太陽、送る血と情熱。ムーア人が求めた地上の楽園はヨーロッパ近世陶磁器発祥の地となり、その彩色陶器はマヨリカ陶器としてイタリアヘ伝えられた。アズレージョと呼ばれる白地に藍の装飾タイルに彩られるポルトガルの街角。人の温もり、激しさと同時に涼しさを伝える陶器はただの土の塊ではあり得ない。美しい職人の手技にチンチン(乾杯)!

 

北欧編

 広重に憧れたデザイナーが白い磁肌に開かせた藍の花。日本の菊はデンマークで一番の人気デザインとして甦った。宮廷文化を反映した器づくりをしてきたヨーロッパの名窯に対し、実用に徹し、機能の美を追究した北欧の器。濱田庄司と、その弟子たちが造りあげた民芸の世界は今も職人たちによって脈々と受け継がれている。小さくても豊かな国々にスコール(乾杯)!

 

トルコ・東欧編

 多彩色陶磁に飾られたモスクは、それ自体が陶磁器の建築物。つまり、精神の器、生活、信仰の器なのだ。チューリップやカーネーションといった花鳥文様、アラビア文字などを描いたタイルが、見るものを幻惑へと誘う??迷宮の都イスタンブールから、激しい労働争議に揺れる東欧の窯まで旅をした。悦惚たる夢幻の境地で精神を肉体から解放しシュレフェー(乾杯)!

世界の職人篇  世界の陶磁器篇  欧州旅籠篇
クリックしてください
Copyright 1998 KEISHI ASAOKA All Rights Reserved