女職人

 

 最近、下町通いです。浅草周辺は今も江戸時代からつづく職人町でもあります。写真は母娘で宝船熊手を造っておられました。酉の市までに、一年かけて熊手をつくります。

技術に裏打ちされた造形にも圧倒されましたが、その生き様におおくのことを学びました。

 

輪郭の飾り

 


 

ニュージーランド

 

 生き様といえば、友人、知人も負けてはいません。それぞれが気を吐きつつも何かから淡々と脱している姿が美しく思いました。

 時には視線の凶暴なまでのはたらきを皆が共有。そしてワイングラスに眼を落とし、フゥーとくたびれた黄昏色の息。
 いい感じの晩メシに感謝です。

 

輪郭の飾り

 

 初秋のクイーンズタウン(ニュージーランド)は、柔らかい風が自慢なのでしょうか。旧友のABCカレッジのMさんに「どの季節もいいでしょう」と念を押されました。清風に浴し全身の垢が落ちてゆく瞬間を実感している僕を見て、Mさんの視線は優越感に転じておりました。

 原始からつづく太古の森で苔の撮影が今回の目的でした。ジュラ紀の名残りを継承する先住民族、マオリの人々の生き様もまた暗く長く辛かったのでしょう。豪州のように「よそもの」によってその文化、伝統、歴史が封印されつづけておりました。

 衆参両院が「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全会一致で採択したのは喜ばしいことですが、300年以上の歳月もまた、長く暗い歴史でありました。

 アイヌ語で「人」を意味する「アイヌ」、マオリ語もまた「人」をマリオと呼称します。でもいきなり侵入してきた「よそもの」にとって先住民族は「人」扱いされませんでした。

 英国のウェールズという呼び名は、アングロ・サクソン人の言葉で「よそもの」の意味です。先住民族であったケルト人系のブリトン人を西の辺鄙な土地に追い払ったヨーロッパ大陸から侵入してきたアングロ・サクソン人こそ「よそもの」であったはずなのに………

 ケプラー・トラックの赤ブナ、銀ブナの巨木の陰に生きる苔、苔、苔。そして不屈の図々しさが潜んでいるような浅間山麓の苔。
 チカッと妙案が閃いたような気がします。
 それにしても苔が生えるって、微妙な表現ですね。

 

 平成二十年 五月三十一日

 

輪郭の飾り

 


 

ボトルと料理の写真

 

 古い女友達からの差し入れ。はじめていただく「海響」という吟醸酒。ボトルはまるで深海を思わせるダークブルー。フルーティな柔らかな旨味とふろふき大根の甘みが心地よく舌の奥で混じり合いました。

 一方は同じブランドですが、ずしりと重量感がある漆黒のボトル。中身は同じですが、何故か喉越し違います。こちらは「孤高の愉しみ」には最適で、得難い気迫と志と親愛が伝わりました。

 お酒も装いで、味も自在に変わるのですね。

 「不眠不休で醸したお酒を搾る時だけは、心から「ホッ!」とする事ができます。」と最年少杜氏として全国新酒鑑評会で金賞を受賞した杜氏の思いがネットに綴っておりました。

 この「ホッ!」が文化なんですね。
 うむ、酒蔵ではジャズコンサートも開くらしいです。熱々のふくの唐揚げに冷えた「海響」そしてビル・エヴァンスかぁ………
 下関拍手喝采ですね。

 

 

輪郭の飾り

 

スベンさんの肖像

 

 スヴェン・ヴェイフェルトさんは、グスタフスベリー窯(スウェーデン)の名工です。日本の造形、釉薬使いを徹底的に学び、氏独特の深淵の世界を造りあげました。

 今回スヴェンさんを通して知り合ったのが東京・外苑前に素敵なギャラリーとショップを経営するリスティの内藤さん。氏は肩のあたりに熱気をムンムン立ち上げ、北欧で育った意匠への思いを語りました。
 心躍る、素敵な出会いでした。

 

 

輪郭の飾り

 

護国寺の花まつり

 

 ワン公との散歩コースの護国寺は花会式でにぎわっておりました華麗に着飾った稚児練供養行列は見事でした。テレビでも放映されていましたが、その傍でチベット仏教の信者たちが叫びと囁きを秘めて複雑な思いで行列を眺めていました。

 昨年のフェスティバルで知り合った老武者のような人と立ち話しましたが、祖国を土足で踏みにじられた無念は、まさに憂鬱の重い雲。
 五大陸を迷走する「聖火」が照らすべきは、『Escape Over the Himalayas ヒマラヤを越える子供たち』なのであるべきです。

 

平成二十年 四月十四日

 

輪郭の飾り

 


 

本郷さんの横顔

 

 祐天寺の本郷さんのアトリエを訪ねました。グラスを持つ彼にレンズを向けたのも束の間、リニューアルした広々としたアトリエで眼に喰い込んできたのが、「非売品」と表示してあったグラス3種。

 用と美の蓄積と継承は「暮らし」が元にあったのです。まさにその「暮らし」とは、どうしても我が家でビールを注ぐことにあったのです。

 後日、うつくしい金彩のグラスが届きました。そう、撮りごろが、呑みごろな午前10時でした。

 

輪郭の飾り

 


 

 
 気持ちのよい「用と
美」の魔術に十分耽溺する時でした。心も遠くなるような古い時代のものと今が直結したような素敵なグラスに乾杯 !!!
 また本郷さんのグラスは、浅間山麓では大胆、不適そして図々しくも優しくもアルコール諸氏とタッグを組んでおります。

 

輪郭の飾り

 


  パソコン仲間

 Mac仲間で盛り上がったのは腕時計に仕込まれたGPS
Google Earthに今日の軌跡を表示し、かつ地図にデジカメの写真を貼付けているHさん


2代目ポチが浅間山麓で5日も失踪した時、こんなGPSを首輪につけていたら………その足跡がたどれるのでしょうね。

 

輪郭の飾り

 


 

 

ホテルの翻訳本


 ヨーローッパ陶磁器シリーズが中国語で翻訳されてましたが、今度は僕が表紙などを担当したホテル本が翻訳されました。今や銀座のブランドショップにあふれる中国人観光客。フランスの瀟洒なホテルも埋め尽くされるのでしょうか。

 以前、南仏の星付きレストランで、テーブルの真ん中に1リットルほどの醤油ボトルをドカンと置いたグループに圧倒されたのを思い出しました。マナーなどといった情けない観念ではない、ド迫力そのものでしたね。

平成二十年 三月十日

輪郭の飾り

 

 


 

 3年前の節分はまだ元気だったネギでしたが、今は病と闘っています。鬼を迎え撃つ体力もありませんが、納豆巻きにはすばしこい眼と口でつっこんでいきました。

 なにやら壮烈な素朴をおぼえる食欲だけが僕らの救いです。鮮烈なネバネバ感がネギの口のなかを走ったのでしょう。

 

輪郭の飾り

 和紙で装飾した椅子

 畳椅子の側面に和紙で写真のように装飾しました。知人の薦めもありベンガラっぽい和紙でモンドリアンを意識。横のラインをどのようにするか思案するだけで楽しいです。

 この和紙の手触りも気に入ってます。そう、以前訪れたジョージア・オキーフの家壁と同じ感触だったのです。彼女の家はアメリカのニューメキシコ州ですが、この壁はアドビ(adobe)と呼ばれる先住民の建築素材でつくられていました。土、藁、水だけで日干しした簡素な建築材です。

 ところで。僕がカメラマンになりたてのころ、琳派を思わせる写真的構図を徹底的にまねた人がオキーフの旦那さまだったんですね。ネットで調べてはじめて知りました。そう、アルフレッド・スティーグリッツです。

 和紙とアドビの温度が同じに思えました。ちなみに僕がカメラ以上にお世話になっているフォトショップの会社も同じ意味のアドビ(adobe)です。粗末な素材(写真)でも、見立てや工夫によっては「オキーフの家」やアドビ様式の町並みが美しいサンタフェのようになる、ということなのでしょうか。

 和紙の細工があまりにも容易なので、使わない額縁に「アドビ細工」をしました。その額は今はトレイとして使ってます。ついでに和紙に「頑張れネギ 全快祈願」とプリントして酒瓶に。

 

 

輪郭の飾り

 


 別冊・家庭画報

 「日本の旧家」出版に参画しました。かつて英国の旧家の人々を取材したことがあります。年代物の家、屋敷をはじめ分厚くて、重くて、丈夫一式、頑強無比の調度品はどれもが歴史を刻んでおり生活態度がみな質素だったのも印象的でした。

 食材をはじめモノをたいせつにしている人々でした。ロンドンのロスチャイルドさんの服の袖にはツギがあてがってましたね。
 ある家の絨毯は修復跡が新たな文様になってました。つまり「もったいない」精神なのです。

「日本の旧家」の人々もおなじように「平凡で普通」に生きることをひとつの美として高めておりました。とくに食材の「もったいない」精神には思わず膝をうちたくなりました。

 あるお宅では野菜くずがほとんど出ないほど活用、魚の骨にいたっては2度揚げして肴にしておりました。
 「暇だから出来るのよ。」との声が聞こえそうですが………

 質素な美に生きる人々の生活──ベットのシーツの皺さえ美しく仕上がっているようですね。

 

平成二十年 二月十七日

 

輪郭の飾り

 


 元旦


 今年も明けてしまいました。
 昨年から不義理を極めた仕事を大晦日で強引に打ち切り、思いは元旦のお屠蘇を夢見て床につきました。今年も昨年とほぼ同じ時間に御来光を浴びました。
 二礼二拍手一拝。
 
 で、洗顔もせず数杯いただき、ほぼ寝間着仕様で早朝の護国寺へネギ(多様性腫瘍=ガンと格闘中)と初詣。祈願すべきはネギの全快です。なんといっても、ここは犬公方のおかあさんが建立したお寺なのですからね。
 
 で、境内の静寂を破ったのが、ネギにガンを飛ばした黒猫でした。しかもその猫が僕らを横切ったのです。これは新年から不吉の兆しかと思いきや、なんとネギが病をおして黒猫を足早に横切ったのです。このような切り返しは、大吉を招くと賢者のお言葉を思い出しました。

 で、また、ガン掛けを公方さまにいたしました。
 慌ただしい元旦のはじまりでした。

 

 

平成二十年 一月元旦

 

 

輪郭の飾り

 



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