この春に落成した軽井沢のD邸でお茶会が開かれました。3階をぶち抜いたリビング、眩しい白壁、シノワズリな優美な調度品も圧巻でしたが、ご亭主の器へのこだわりには敬服しました。
茶会の夜、ご主人がLAから帰国。土産は高台の塗盆と銀盆でした。アメリカ土産がアジア趣味というのが、出張のすべてを語っているようでした。
その器を茶会に活かしたのが、ご存じ、齋藤宗厚先生。抹茶をその銀盆に載せてのサービス。茶碗はカフェ・オ・レ用の洋食器でした。
畳立礼は洋館にも見事に溶け込み、風があたりで遊んでいるような爽やかな1日でした。
ベランダへ続くガラスドアの部分、つまり窓ガラス5枚分が夜には大スクリーンになりました。上質なオーディオとともに映し出されたご主人のDVDコレクションは圧巻。
夜は世界遺産の世界をじっくり鑑賞。僕が憧れていた巨大な画面が、眼前に広がっておりました。D家でも犬はいたのですが、ちと遠慮して我がワン公はベランダで惰眠をむさぼっておりました。
畳立礼は移動式茶室でもあるので、当然我が洞でもお茶を愉しみました。ただ素材が木なので、重量はそれなりです。運搬もかさばることもあり、現在は改良型の畳立礼を考案中。
我がお月見台へ運ぶのも一苦労です。まず素材ですが強化段ボールというのがあるらしいです。パリで活躍する日本人建築家が、段ボールで教会、美術館などを建てというテレビ番組を見ました。
そう、畳立礼の素材は紙で充分なのです。その「箱」が折りたたみになれば、さらに運搬も楽になるでしょうね。
「粋と野暮の真ん中を往く」が齋藤宗厚先生のポリシーですが、「都会と田舎の真ん中を往く」が僕が設計した老後です。
いや「茶と酒の真ん中‥‥‥」でしょうか。
平成一八年 十月十六日