30年にわたりお世話になっている吉井画廊の吉井さんがフランスの国家功労章コマンドゥールを受章しました。スーティン、ザッキン、シャガール、ルオーなどエコール・ド・パリの芸術家を日本に紹介し、美術家のため数々の奨学金制度を設けたご褒美だったのでしょうね。

 

 吉井画廊

 黒田辰秋門下の木工家が吉井画廊に集合。展示会場でまず目を引いたのが川眞田克實さんの黒瓶子。おおらかな肩張りの曲線、その造形に大宗教のもつ懐の深さをおぼえました。瓶子とは酒を入れて注ぐための容器で、まさに神器のたたづまいでした。

作品1

 


茂木さん

 藤嵜一正さんの漆器に僕のカメラもうなりをあげておりました。
 「これで酒盛りしたらたまらん」と僕のレンズを一瞥。

 昭和41年 人間国宝 黒田辰秋氏に師事してから藤嵜さんは出世街道を今でも突進中なのであります。

 日本伝統工芸展日本工芸会賞など数々の受賞のオンパレードなのです。

 玄妙を極めた精緻な造形にうっとりしておりました。

 

作品

 渋い古色の片口酒器も魅力的ですね。その趣は心も遠くなるような古い時代のもののようです。今回の企画は豊田美術館の元副館長であり「黒田辰秋の世界」を執筆なさった岐阜市在住の青木正弘さんの立案によるものでした。
 年内にもう一度青木さんにお会いし、じっくり木工の世界を教えていただきます。


 

講演会

 
 そろそろ生牡蠣かぁ、と思っている矢先に殻付牡蠣をいたただきました。殻をあけたら、写真のように蟹のあかちゃんが遊んでいました。(かなり不気味かも)

 で、殻むきに夢中になっている間に、あかちゃんはどっかに消えておりましたが、どこへ行ったのでしょう。
 生をはじめ、焼き牡蠣、つづいてオクサンがフライにし、シメは雑炊て楽しみました。
 気がつきましたら、すべて胃袋の奥深くに消えておりました。

 

 

輪郭の飾り

 

ビアマグ

 
 毎年この時期に紹介していますキリンビールのビアマグ。今年もWEB掲載10日後には完売したようです。羨ましい限りですね。このマグシリーズは今年で30周年。とても長いお付き合いとなっております。コレクターにとっては一大コレクションですね。

 

輪郭の飾り

 


 

みきもと

 
 我が家ではほとんど縁がない宝飾。その大御所MIKIMOTOでクリスマスプレートの写真が展示されております。テーマは「北欧陶磁器とジャポニズムの融合」。

 デンマーク、フォンランドのクリスマスを経験したことがありましたが、旅行者にとってはじつに不便な夜でした。レストランなどはほとんど閉店し、街はしんと静まっていました。

 「クリスマスの夜は家で祝い、楽しむもで質素な祭日よッ。」コペンハーゲン在住のS女史が蔑むような視線を投げかけました。
 ウム、正論でした。たしかに僕らの知っているクリスマスはハリウッド仕込み、ド派手なメイドインUSAだったのですね。

 しんしんと深い年末が迫っております。

平成二十年 十二月二十五日

 

輪郭の飾り

 


 上野の森で「尾形光琳生誕350周年記念 大琳派展」を鑑賞。国宝7件、重要文化財34件をふくむ絵画、書跡、工芸の直蒔き状態でした。本阿弥光悦・俵屋宗達・尾形光琳・尾形乾山・酒井抱一・鈴木其一の6人の優品240件を数時間で見るのは満足感というより疲労感が残りました。

光琳カタログ表紙

光琳の屏風絵

 

 蛍光照明の下、ガラスのゲースに保護された名品の数々は病人が横たわっているように見えました。ダイナミズムが半減です。
 光琳は、屏風の背景つまり床映りを考慮して描いたでしょうけどね。

 というわけで、風呂上がりにバスローブをひっけての図版鑑賞。僕の先人の遺風にたいする流儀でもあるのです。
 夜も更けるにつれ、光琳の屏風絵が美しく闇にとけていきました。

 翌週にヨーロッパ陶磁器のお話の会をひかえておりましたので、300年前のマイセンの絵付師を驚嘆させた「柿右衛門」の原型を撫でるように、かなり飛ばし気味に「琳派」をテイクアウト。その意匠は「柿右衛門様式」となってドイツをはじめ、フランスのシャンティ窯、サン・クルー窯、イギリスのチェルシー窯へと伝播していったのでありました。

 

輪郭の飾り

 


 

講演会

 お話の会は写真のようにいつもご夫人方がほとんどですので、僕のノリはキミマロ氏に習っておりました。でも今回は僕とほぼ同世代の男性のみ。

 「琳派」「柿右衛門」そしてマイセンとお話を進めましたが、反応はほとんどありません。唯一みなさんの目がチカッとしたのは職人たちの手捌きの時でした。名人たちは指先に脳と直結したセンサーが内蔵されている──そして「ボケと手の動き」──云々。

 「老老、認認介護」は、僕をふくめいまや比較的近い将来の恐怖なのであります。

 

 

輪郭の飾り

 


 

講演会

 団塊世代の男たちといえば、先輩の出版記念会に参集した面々。レンズ越しに、火のでるような競い合い、闘いをくぐり抜けた貌、貌、貌に胸が満ちました。

 

輪郭の飾り

 

講演会

 
 
まさに生の充実、その横顔はまことに無頼飄々。愛国の鬼と化した小野田元少尉殿がブラジルから記念会に駆けつけていただきました。今回のようなパーティーにはいっさい出席しない小野田さんですが、K先輩は別格だったのでしょうね。

 度を超えた純粋主義者、完全主義者の小野田さんにお会いでき、清風に浴する思いでした。

 

輪郭の飾り

 

大蔵さんの塗盆

 漆器は僕にとっては必須アイテム。ジャポンといわれる漆はフランスをはじめヨーロッパでは高級文具や喫煙具によく使われていますね。

 今回購入したのは、木地に和紙を貼ってその上から何度も漆を塗り重ねた盆です。鎮静の効果を発揮するような和紙の肌合いに魅せられました。
 作家の大蔵さんにお持ちいただきました。

 

輪郭の飾り

 

大蔵さん近影

エンドウ

天ぷら

 
 毎日呼吸し生きている漆の魅力のひとつに、年月とともに表情が豊かになってゆくことでしょう。朱色などは透明度が高くなり明るくなってゆくのが不思議ですね。
 祖母が愛用していた底艶、使い艶が絶妙な漆器は、我が家では現役です。「津軽のバカ塗り」の所以でしょうか。

 別便で大蔵さんからいただいた丹波枝豆のこっくり、もっちり食感が忘れられませんでした。一粒一粒に豊かな甘みがあり、おつまみというより主役をはれる食材でありました。

平成二十年 十一月三十日

 

輪郭の飾り

 


 

 喫煙大好きの僕にとって、某タバコメーカーの一翼を担えることは、狼狽するほどに光栄の極みであります。
 シェリーとタバコの関係は知りませんが、シェリー酒が写っている写真が活躍しそうです。

ヨーロッパの酒

 
 スコットランドのウイスキー樽を作る職人の一文を書いたことがありました。「じつはウィスキーもちゃっかりいていてね。樽をヤドカリのように利用するのだから。彼らはまっさらの樽は好まず、シェリーの酒精をたっぷり吸いこんだ樽にしか熟睡しないよ。してやったりだろうな。」
 ウィスキー党を自認する知人のM教授がチビリ、チビリ呑りながらいっていたのを思いだしました。

 シェリーはスペインのアンダルシア地方のワインですが、スッキリした喉越しと紫煙のホロ苦さの組み合わせはたしかに魅力的ですね。

 

輪郭の飾り

 

上布

水中

浜辺

 
 
国の重要無形文化財となっており巧緻きわまる宮古上布を撮影してきました。「絣括り(かすりくくり」という技法で織れる人は数人しかいないらしいですが、心も遠くなるような古い時代の布に、夢を重ねて研修に励む若い人も増えているのが救いでしょうね。
 
 素材は麻ですが、糸はどこまでも繊細。絣模様は精緻精妙そのもので織り上げた布はロウを引いたように滑らかです。まさに三代物と言われるほどのブランドなのでしょう。

 宮古島といえばスクーバ・ダイビングですね。透視度30メートルはさすが沖縄です。ときどき潜りにゆく西伊豆の大瀬崎は冬場でも5メートル先がぼんやり見える程度です。
 強引に圧縮した空気に身をまかせ、天地左右もなく無重力に似た海中散歩は、沈黙の世界のはりつめたうつくしさがありました。

平成二十年 十月三十日

輪郭の飾り

 


 

山口さんの作品

 
 
サンクト・ペデルブルグの骨董屋で買ったマイセンの皿が割れしばらく放っておきましたが、金継ぎを「美土里の洞」の女将に教わり、自力で修復しました。
 金継ぎといえば老練の技というイメージですが、釣り具店で売っている新漆などを使えば個人でも気軽に修復できます。
 塗り盆、塗り箸の剥げている部分の修復にも最適でした。

 愛着があった器が自らの手によって生き返る──そんな小さな幸せを覚えるこのごろです。

 

輪郭の飾り

 

カブトムシ

 
 
夏の終わりの小さな物語です。我が家の前でワン公がオシッコしている時に、嬉しい闖入者。
 一晩だけということで強引に家に泊めたら、翌朝ぐったりしていました。夏の終わりに………とクリスタルのコーヒーポットに泊めた(閉じ込めた)ことを反省しましたが、顛末はムービーをご覧ください。それにしてもケイタイのムービーや写真機能は凄いですね。

 

輪郭の飾り

 

チーズ

開高さんお手紙

 
 カマンベール・チーズといえば北フランス
ですが、どっこい、北海道産のカマンベールも負けてはいませんでした。友人のSさんから西村公祐さんのチーズをいただきました。

 かの開高健に「これは抜群です。」と言わしめたほどですから、あえて味を語るのはやめましょう。チーズとともに送られてきたのがSさん自作の「桜の花の梅酢漬け」。
 チーズのコクと旨味に絶妙な酸味。
 素晴らしい秋の予感が舌に広がりました。

平成二十年 九月三十日

 

輪郭の飾り

 


 

山口さんの作品

 今年も陶工、山口さんに所望、新作が我が家へ。「線描練上げ」技法の進化に触れた思いです。エッジの効いた文様に強い意志を感じました。

 さて、この造形をどう撮ろうと思いつつ、呑っちゃいました。H氏のグラスが僕を一瞥。その視線に押され冷凍庫でトロトロになったウオッカをしずしずと注ぎました。
  キャベツが優しい光を返してくれました。

 

輪郭の飾り

来訪者

 浅間高原での楽しみは、いろいろな出会いです。東京の女子大を出て「農家に嫁ぐことにあこがれましたぁ」とネギを大地からひっこ抜く娘さんには感動すら覚えました。
 そんな孫嫁を、大樹の陰のように見守るお爺ちゃんでした。

 溶岩盆栽の魅力を教わった廣瀬ご夫妻、そして「第三の人生」を極めつつある尺田ご夫妻に乾杯です。

 

輪郭の飾り

山草花

溶岩盆栽

 嬬恋村で興味をひくのが苔です。古色、永劫、森厳、静寂、静謐、隠逸、孤独と苔をイメージする言葉が浮かびます。日が暮れ空が濃い群青色になるころ、窓越しの僕だけの光景はまさに幽谷。

 そんな環境で育った苔に最近とくに執着しています。苔はわが幽谷における主役なのであります。

 「苔の衣」「苔の袂」「苔の袖」は、雲水の衣を表しておりましたが、転じて世捨て人の境遇を指しております。うーん、まさに我が家は「苔の庵」ということでしょうか。

 溶岩盆栽が苔を纏う日が待ちどうしいです。

平成二十年 八月三十一日

 

輪郭の飾り

 


 

大野さんの自家製スピーカ

 

 上野の森に行ってきました。
 お題目は「フランスが夢見た日本」。広重、北斎が描いた絵を陶器に写した19世紀フランス人絵付師の作品が展示されていました。

 ここ10年、僕はレタッチソフト(PS)に厄介になっておりますが、まさに100年前のレタッチャーに出くわしたのでした。

 芭蕉は伊勢の守武の句の前で、「われもまた」といいつつ、守武とまったく同じ句を自分の句として吟じておりました。その絵付師も「われもまた」と広重、北斎の気に入った部分だけを写したのでしょうね。
  
 世阿彌だって同じです。
 「謡曲を作る時は、ただ古から伝わってきた面白いところを織り交ぜて一遍にせよ」と弟子に説いております。得意気な創作などせぬをよし、と戒めたのでしょうね。
 生まれたままの肌は、生命のみずみずしさをもっています。目で見、頭で考え、そして判断するのではなく、対象と出会った瞬間に心にわずかでも残った生まれたままの肌が緊張し、反応するのでしょうか。

 

 

輪郭の飾り

 

大野さんの自家製スピーカ

 

 つづいての上野の森は「対決−巨匠たちの日本美術」。「運慶vs快慶」に始まり雪舟vs雪村、永徳vs等伯ら中世から近代までの日本美術史に魂を刻む24人の巨匠たちが対決したのです。
 なんとも気の遠くなるような十二戦でした。

 並列展示した大作は一瞬にして見るものを圧倒しますが、小さな碗対決にとても惹かれました。
 「長次郎vs光悦」の一戦。まずは生い立ち。光悦は金持ちの家に生まれ、長次郎は出身地、生没年も不詳。略歴も瓦職人としかありません。マルチタレントのような光悦は流行作家を意識したモダン、求道者のような長次郎には、ハイプリミティブな気迫を覚えました。

 絵師・山口晃さんが描いた巨匠たちは、図版や音声の解説より実像に迫っていたようです。なかでも長次郎、光悦の対比は、まさに現代の縮図でした。

 抽象された映像、手強し。
 言葉の無力、実感しました。

 そうそう、ミュージアムグッズはご覧の絵葉書を買いました。
 俵屋宗達の「狗子図」。なんと我がワン公とそっくりでした。

 

 

輪郭の飾り

 

大野さんの自家製スピーカ

 

 元を正せば写真ってパクリですよね。カメラマンになったばかりに読んだ本が重森弘淹の「写真芸術論」でした。写真を強引に背伸びして芸術論に持ち上げたところがつまならなかったですが、「押したシャッターの総量がその写真家の技量」とさらりと言った東松照明の言葉が今も心に残っています。

「我々は他者の権威(被写体)によって生かされている。撮った人間より撮れれた人間、風景、あるいは雑景などレンズの向こうにいるヤツが偉いんだ」
 リチャード・アべドンが雑誌のインタビューに答えていたが、写真の本質を突いております。

 上の写真は萩ガラス工房で撮影しましたが、別々に撮った窯と器をひとつにしました。カメラマンというより、レタッチャーとしての誇りと意地でMacと対峙しているこのごろです。

 ガラス工房の作品展がA246ギャラリーで開催されております。ガラスの材料となる石英玄武岩の品格ある緑がじつに美しいです。

 そして何よりも魅力的だったのが、幕末のガラス技法の復権を試み、また「ガラス質結合剤による高機能性多孔質セラミックフィルター」の研究開発への意欲を語っていただいた藤田洪太郎代表でした。
 

 「次回は北浦産のウニをたらふく喰わせる」と豪快なお誘いもいただきました。

 

平成二十年 七月三十日

 

輪郭の飾り

 


 

自家製スピーカ

 

 道楽、数寄者のH氏の愉悦をご紹介します。I Tエンジニアにとっては、おもちゃ箱をひっくり返すと出来上がっちゃうのでしょうね。
iPod touchの外付けスピーカを作っちゃいました。

 し、しかもお気に入りの葉巻ケースで。さらに電池で仕事するのですから驚嘆です。

「実は一杯呑みながらJazz演奏の映画を見たい時にちょこっと音の出せる仕掛けが欲しいと言うのが不純な製作のきっかけでした。」とH氏でした。

 

 

輪郭の飾り

 

大野さんの自家製スピーカ

 

 H氏に習い我らの一翼を担うO氏もまた、自作スピーカをご披露。あっちが高級葉巻だったら、こちらはタリーズの無料紙コップがスピーカボックスとなりました。

 でも、ケーブルがうっとうしいですね。
 次作はコードレス(BlueTooth Speaker)ということでした。

 ワンコインで制作、大人の休日を学びました。

 

 

輪郭の飾り

 

ネギのスピーカ

ポチのスピーカ

 

 H氏→0氏→アサオカとなりました。ワン公スピーカを捏造しました。

 好機がありましたら、廃物同然のニコマートにスピーカを埋め込んでいただきたいものです。

平成二十年 六月三十日

 

輪郭の飾り

 



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